研究内容
ナンセンスmRNA、転写後制御を標的とした創薬
がんや遺伝性疾患変異の約三分の一では異常終止コドンを生じますが、変異遺伝子由来のナンセンスmRNAは品質管理機構(NMD:Nonsense-mediated mRNA decay)で分解されます。そのため、フレームシフト変異遺伝子由来ナンセンスmRNAがコードするがん特異抗原の発現は低く保たれます。一方、ナンセンスmRNA由来のタンパク質が機能を持つ遺伝性疾患症例では、mRNA監視機構の阻害は疾患症状回復へつながります。さらに、全変異の10%を占める点変異によるナンセンスmRNAについては、翻訳終結リードスルー剤が用いられますが、リードスルー剤はmRNA監視機構を阻害しないため、NMDの阻害による相乗効果が期待されます。このような状況の中、mRNA監視機構阻害剤同定の報告が相次いでいるが、その大半は追試できない「擬陽性」です(未発表データ)。これは、阻害剤同定の技術的な困難さの裏返しであり、「真の」mRNA監視機構阻害剤開発が急務となっています。私たちは、mRNA監視機構であるNMDの活性の高精度モニタリングシステムを樹立しました。これを用い、NMD阻害剤スクリーニングをおこない、新規のNMD阻害剤を同定しています。さらに、mRNA監視機構モニタリングシステム樹立に用いた技術を発展させ、様々なサイトカインを含む創薬標的遺伝子の転写を制御をターゲットにしたスクリーニングプラットフォームを構築しています。