研究業績

Nucleic Acids Research 51, 11, e76 (2023)
Simultaneous measurement of nascent transcriptome and translatome using 4-thiouridine metabolic RNA labeling and translating ribosome affinity purification

著者

Imai H, Utsumi D, Hidetsugu T, Takahashi K, Kuroyanagi H, Yamashita A

カテゴリ

論文

Abstract

 生物は環境の変化やストレスに対応するため、遺伝子発現パターンを変化させます。遺伝子発現の最終産物であるタンパク質の存在量は、(1)成熟mRNAの量(転写量)と(2)タンパク質合成量(翻訳量)に大きく影響されます。このうち、(1)成熟mRNAの合成量と分解量を詳細に調べるために、ヌクレオチドアナログを用いたRNA代謝標識法が有効です。例えば、ヌクレオチドアナログの一つである4-チオウリジン(4sU)を細胞培地に添加すると、その後合成されたRNAにはウリジンの代わりに4sUが取り込まれます。次世代シーケンサーにより4sUの取り込み部位に生じるT>C変換(注2を検出することで、4sU添加後に合成された新生RNAを調べることができます。一方、(2)成熟mRNAの翻訳量もタンパク質の存在量に大きな影響を与えます。翻訳量の推定には、タンパク質合成装置であるリボソームに結合した成熟RNA(≒実際に翻訳されているRNA)を調べることが有効です。  転写と翻訳は相互に影響し合うことから、転写量と翻訳量を同時に測定することで遺伝子発現パターンの変化をより詳細に理解できるようになると期待されます。しかしながら、RNAの転写量と翻訳量を同時に測定できる簡便な方法はありませんでした。  本研究では、タンパク質合成装置であるリボソームのPストーク領域のエピトープを認識する抗体により、様々な真核生物から翻訳中のリボソームを簡易に回収できるP-stalk mediated Translational ribosome affinity purification(P-TRAP)法を新たに確立しました。また、P-TRAP法と4sU-RNA標識法、次世代シークエンス法を組み合わせることで、RNAの転写量と翻訳量を簡便に測定できる手法nascent P-TRAP-seq(nP-TRAP-seq)法を新たに樹立しました。開発したnP-TRAP-seq法を用いて、ヒト胎児腎細胞の小胞体ストレス応答での遺伝子発現パターンの変化(RNAの転写量と翻訳量の変化)を調べ、小胞体ストレス応答時に新たに合成された新生RNAの中でストレス緩和などに関わるものが積極的に翻訳される一方で、それ以外のものの翻訳が抑制されることを発見しました。
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