琉球大学 大学院医学研究科 山下暁朗 研究室

山下暁朗研究室では、mRNA転写後制御をターゲットとした基礎研究と創薬開発研究を行っています。

私たちの研究室では、mRNA転写後制御機構であるmRNA監視機構の活性が生体内で調節されるメカニズムを、特に細胞ストレスとの関係を中心に理解し、新たな希少遺伝性疾患治療、がん治療法の開発につなげています。また、基礎研究で培った技術基盤を用いることで、様々な疾患の治療・予防法の開発につながる研究を展開することを目指しています。

学振PD募集中_応募期間:令和4(2022)年4月中旬~6月2日(木)17:00

研究内容

近年、mRNAが転写されてから、翻訳されるまでの過程である「転写後プロセス」が、様々な生命現象のなかできわめて大きな役割を果たしていることが明らかとなり、新たな創薬標的として注目されつつあります。例えば、細胞の増殖を促進する増殖因子や、感染症に対応する炎症反応誘導因子として働くタンパク質は、その過剰な産生は、がんや炎症性疾患(例:リウマチ)の原因となります。そのため、これらの遺伝子の発現は一過性である必要があり、mRNA分解の促進や、タンパク質翻訳の抑制などの転写後プロセスにより厳密に制御されています(Nucleic Acids Res.2019)。しかし、様々な技術的問題から、転写後プロセスを標的とした創薬の成功報告は限られていました。私たちは、転写後プロセスを簡易・高精度に評価する測定法の開発に成功し、がんや炎症性疾患を含む様々な病気の治療薬開発プラットフォームの構築を進めています。
 転写後プロセスの制御機構のなかで、最も解析が進んでいるものの一つが、私たちが中心となってその分子機構を解明したmRNA監視機構です(Nat Commun. 2016など)。mRNA監視機構は、タンパク質合成が途中で止まってしまう遺伝子変異を持つmRNAを監視し、積極的に分解排除します。例えば、がん細胞における遺伝子変異により生み出される「がん抗原」をコードするmRNAは、通常mRNA監視機構が分解排除しています。そこで、mRNA監視機構の阻害することで「がん抗原」の発現を誘導し、がん免疫によりがんを治療する、新しいタイプの抗がん剤の開発を行っています。

mRNA監視機構の活性調節機構の解明
 私たちの体では、ナンセンス変異(タンパク質の翻訳が途中で終わってしまう変異)が存在するmRNAを積極的に分解排除する、mRNA監視機構を有し、正常なmRNAとタンパク質の発現を保証しています。一方で、この機構はがん抗原をコードする変異mRNAや、途中まででも機能を有するタンパク質をコードする変異mRNAも分解してしまいます。私たちの研究室では、mRNA監視機構の活性が生体内で調節されるメカニズムを、特に細胞ストレスとの関係を中心に解明していきます。
ナンセンスmRNA、転写後制御を標的とした創薬
様々な生命現象・疾患においてRNA制御は大きな役割を果たしています。山下暁朗研究室では、遺伝性疾患、がん、炎症やウイルス感染の新たな治療標的の発見につながるmRNA分解・翻訳の制御機構の基礎研究に基づき、従来の薬剤では治療が困難であった様々な疾患に対する治療法の開発に取り組んでいます。
mRNA転写後制御の生命現象、疾患における役割の解明
mRNA翻訳を含む転写後制御は、mRNAに結合する様々な蛋白質により制御されています。mRNAの5’や3’非翻訳領域にはシスエレメントが存在し転写後制御の起点となっています。これまでに、5’や3’非翻訳領域には多くの蛋白質が結合することが報告されており、mRNAのキャップ構造、eIF4E-eIF4G複合体、リボソーム、ポリA鎖などを標的とし、mRNA分解、翻訳開始、翻訳伸長などの様々なステップを制御しています。さらに、翻訳がmRNA量の調節にも関わることも知られています。私たちは、様々な生命現象、疾患における転写後制御の役割の解明を目指し研究を行っています。